日常をハックする—ブロックチェーンで考えるぼくらの未来@IAMAS 2019.9.3 - 11.3

近年話題となっている仮想通貨(暗号通貨)を支える技術「ブロックチェーン」の考え方を、ボードゲーム「TRUSTLESS LIFE」での遊びを通して学び、自分たちの生活の中でどのように活用できるのかを考え、ゲームのプロトタイプを制作し実践する。

講師

・加藤明洋:1992年生まれ、愛知県出身。大学卒業後ウェブ制作会社を経て、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)に進学、メディア表現専攻修了。ブロックチェーンが新しい社会を作る一つの可能性を持っていると考え、それを伝えるための表現としてボードゲーム「TRUSTLESS LIFE」を制作。CREATIVE HACK AWARD 2018 SONY 特別賞を始め各方面からの評価を得る。
・高見安紗美:1992年生まれ、三重県出身。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修了、サウンドインスタレーションを専門に、インタラクティブアート、キネティックアート等様々な作品制作に携わる。現在は静岡文化芸術大学で技術員として従事。


ゲスト講師

後藤良太
ミヤザキユウ

https://www.iamas.ac.jp/news/gifu-creation-ws2019/

ブロックチェーン技術が社会に適用された時、私たちの生活はどのように変わるのだろう

現在の日本は超高齢化社会といわれ、既に有権者の半数以上が51歳を超えている。この成熟した社会に生まれたミレニアル世代の多くは、自分たちが生まれる前から決まっていたルールを自分たちの力で変えることはできないという無力感を感じている。さらに、自分たちよりも前の世代が第二次世界大戦後の高度経済成長の中で築き上げた価値観への同調圧力を常に受け、閉塞感を感じている。
そんな社会の中における唯一の希望がインターネットである。ミレニアル世代は、生まれた時から存在しているインターネットが社会を大きく変えてきた様子を見てきている。自立、分散、協調を基本とするインターネットが、既存の凝り固まった権力や仕組みを、効率よく、平等に、分散してくれることを体験している。
ここ数年で世界経済に大きな影響を与えつつある仮想通貨も、インターネットが可能にした未来の一つである。仮想通貨を実現する基盤技術として提唱されたブロックチェーンは、非中央集権的に信用を担保できるため、インターネットに匹敵するパラダイムであると言われている。ブロックチェーンは、仮想通貨以外の用途における可能性が注目されているが、ブロックチェーンが実装された社会と現在の社会との違いが大きすぎるため、多くの人々にとっては具体的に想像することができない。
この作品は、近未来にブロックチェーン技術が実現するであろう未来の社会を、人と人とが対面でプレイするボードゲームとして表現することにより、多くの人々がその可能性と課題を想像できるゲームである。プレーヤーは、現在の社会においては大きな要素であるにも関わらず目に見えない「信用」が、コミュニティの中で決めたルールに従って数値化されてその変化を記録される社会における「人生ゲーム」を体験する。
この社会においては、主に仕事をベースに信用度が上下するようになっており、信用度が上がれば家を借りられるようになったり、シェアライドできるようになったりと、ゲーム中のさまざまな行動がしやすくなる。また、過去に大きな失敗をしたとしても、地道に信用度を取り返えせば永遠にその失敗によって虐げられることはないし、きちんと仕事をしていさえすれば、誰とも会わずに引きこもっていても虐げられない。このように、ブロックチェーンによって信用が担保されることにより、それぞれの目的に応じた多様な生き方が自然に実現する社会なのである。